
いにしえ人の詩(うた)
<四季の眺(なが)め>
冬
冬は春のはじまり。
梅が
雪の中から花をひらいて
春がはじまる。
その花びらの匂いと風情は
あすを待つ人々の
心のふるさと。
人はいさ 心も知らず ふるさとは
花ぞ昔の 香ににほひける
紀貫之(きのつらゆき)(868−945)
梅の花は雪の中で開く。
戦うこともなく
力(ちから)を使うこともなく
ただ笑ってひらく。
少年のころから激しい情熱を燃やして
生きぬいた
新島襄(にいじまじょう)の心のふるさとも
この梅の花でした。
庭上一寒梅
笑侵風雪開
不争又不力
自占百花魁
(五言絶句-ごごんぜっく)
新島襄(にいじま じょう)(1843−90)
春
雪がとけて地が緑の芽をふく。
春の草花には
あしたへの予感がただよう
君がため 春の野に出でて 若菜つむ
わが衣手に 雪は降りつつ
光孝天皇(こうこうてんのう)(830−887)
夏
夏の草花は
いたずらっ気な冒険心を誘う
山路きて
何やらゆかし
すみれ草
松尾芭蕉(まつおばしょう)(1644−94)
1689年に奥羽・北陸を
150日間にわたって旅をした芭蕉の
こころのふるさとも
野辺の花でした。
秋
秋の草花は
風のように通り過ぎた
あの夏の出来ごとを想い出させる
そして秋は・・・
月が
人のこころに問いかける。
三笠の山に いでし月かも
安倍仲麻呂(あべのなかまろ)(698-770)
冬
そして
また冬を迎える
旅に病んで
ゆめは枯野を
かけめぐる
ふたたび芭蕉の句。
1694年10月
大阪で病に倒れた芭蕉。
10月はまだ秋なのに
なぜ
冬の枯野を詠(よ)んだの?
冬の枯野では
春の用意が始まっているからさ。
雪をとかして
かわいいゼンマイが芽を吹く!
芭蕉は夢の中で
ふたたび自然が萌(も)えるのを
さがし始めたのさ。
野辺の草花も
虫たちも
芭蕉の気持ちと
同じさ。
かならず春が来ることを
知っている。
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